ポルシェ経営危機の真相 ― 利益率0.2%に沈んだ「再生の転換期」

Porsche

■ 高級ブランドの象徴、まさかの赤字転落

2025年、ポルシェがまさかの四半期赤字を発表した。
ドイツ本社発表によると、2025年7〜9月期の営業損益は9.66億ユーロの赤字
さらに、1〜9月累計の営業利益はわずか4,000万ユーロにとどまり、前年(約73億ユーロ)からほぼ消滅した。
営業利益率は**0.2%**まで低下。高級車ブランドとしては異例の水準だ。
(出典:Porsche Newsroom, Q3 2025 Financial Report)


■ なぜ急速に悪化したのか — “三重苦”の現実

公式発表と複数メディアの分析を総合すると、業績悪化の主因は以下の三点。

  1. 中国市場の販売減少
     2024年以降、ポルシェの中国販売台数は前年比**▲28%**。高関税・経済減速・国産EVの台頭が直撃。
  2. コスト構造の重さ
     EV開発、ソフトウェア投資、次世代プラットフォーム移行費用に加え、再編コスト27億ユーロを計上。これが営業利益を大きく圧迫。
  3. 地政学的リスクと米国関税
     2025年8月、米国が欧州製乗用車に対する輸入関税を**15%**へ引き上げ。北米利益が目減りする形となった。

■ VWグループ全体の影響

ポルシェはフォルクスワーゲングループ(VW)傘下にあるため、親会社の動向も直接影響する。
VWは2025年10月28日に通年営業利益率見通しを6.5〜7.0%から5.5〜6.5%へ下方修正
さらにドイツ国内で最大3.5万人の削減を検討中と発表した。
ポルシェの再編も、このグループ全体のコスト削減方針の一環とみられる。
(出典:Volkswagen AG IR, 2025年10月28日発表)


■ “経営危機”という言葉の真意

SNSなどで「破綻」「資金ショート」といった極端な噂が出ているが、それは事実ではない
ポルシェAGは2025年1〜9月期のオートモーティブ部門で13.4億ユーロのネットキャッシュフローを確保しており、
短期的な資金繰りに問題はないと明言している。

つまり今回の「危機」とは、資金難ではなく構造転換に伴う一時的な利益圧迫という意味である。


■ 経営陣交代と人員削減 — 再生への第一歩

2026年1月1日付で、CEOは**ミヒャエル・ライターズ氏(Michael Leiters)**に交代予定。
現CEOオリバー・ブルーメ氏(VWグループCEO兼任)はグループ経営に専念する。
ポルシェは同時に、ドイツ国内で約1,900人削減を発表(自然減・有期契約終了が中心)。

新CEOのライターズ氏は元フェラーリCTOで、製品開発とEV戦略に精通する技術系リーダー。
市場では「技術主導の再建」を象徴する人事としておおむね好意的に受け止められている。


■ 株価動向 — “危機”はどこまで織り込み済みか

フランクフルト証券取引所に上場するポルシェAG普通株(P911)は、2024年初頭の約€70から2025年10月には€47前後へ下落。
1年間で30%超の下落となった。
背景には、利益率ガイダンスの大幅下方修正(10〜12% → 0〜2%)、再編コスト、EV販売鈍化などがある。

第3四半期決算発表後の10月24日には株価が**€45.50まで一時下落。
しかし10月28日時点では
€48.56(前日比+1.2%)と小反発している。
Bloombergによるアナリスト平均目標株価は
€65(上昇余地約34%)**で、
市場は「悪材料をほぼ織り込み済み」との見方が強い。
(出典:Bloomberg / Yahoo Finance, 2025年10月28日)


■ 新型EV「マカンEV」に見る希望

次世代EVモデル「マカンEV」は2025年1〜9月で約2万台を納車(前年比微減)し、受注残は約4万台に上る。
販売ペースは鈍化しているが、需要そのものは堅調で、
2026年以降の業績回復ドライバーとして最も期待されている。

一方で、バッテリー供給の遅延による一部生産調整も報じられており、
サプライチェーンの安定化が課題。
(出典:Porsche Newsroom, Q3 2025 Report)


■ 利益推移で見る「成長と急落」

年度売上高 (億ユーロ)営業利益 (億ユーロ)営業利益率
201928538.613.6%
202028641.714.5%
202133153.116.0%
202237667.718.0%
202340572.818.0%
202440156.414.1%
2025(1–9月)2680.40.2%

(出典:Porsche AG公式 / Volkswagen Group IR)

→ 2023年までは右肩上がりだった利益率が、2024年に急落し、2025年YTDでは事実上ゼロに。


■ EXSPEC AUTO的視点 — 苦境は「終わり」ではなく「始まり」

数字だけを見れば“危機”だが、ポルシェのブランド基盤・技術力・顧客層はいまも盤石だ。
911・カイエン・パナメーラといった主力モデルが支え続ける中、
マカンEVを筆頭にハイブリッド/EV化の再構築が着実に進んでいる。

新体制による開発主導の改革が実を結べば、
2025年の赤字は“終わりの始まり”ではなく、
**「新しい時代へのチューニング期間」**として記憶されるだろう。


■ まとめ — ポルシェは沈むのか、それとも再び走り出すのか

  • 2025年、利益率0.2%まで落ち込んだのは事実。
  • だが資金ショートではなく、再編費用による一時的な赤字。
  • VWグループ全体での構造改革が同時進行中。
  • 新CEOミヒャエル・ライターズの技術再建に市場は期待。
  • マカンEVを中心に2026年以降の回復フェーズへ。
  • 株価は既に悪材料を織り込みつつあり、反転の可能性を残す。

「ポルシェが赤字を出したというニュースは、終わりではない。
それは“再生のエンジンが始動した音”なのかもしれない。」

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