VENUUM V40
見てくれよ、このVENUUM BLACKの新しいコンセプトモデル「V40」を。
名前に“40”を入れてきた時点で、何を意識しているかはもう説明不要でしょう。SF90をベースにした、F40オマージュ、あるいは現代的な再解釈と見るのが自然です。
しかもこれがSF90ベースというのが面白い。
ちょうど849テスタロッサが出たあとだからこそ、これはVENUUMなりのアンチテーゼなのか、とまで思ってしまうタイミングなんですよね。
自分はSF90がかなり好きで、その後継がどうなるのかも本当に楽しみにしていました。だからこそ849テスタロッサが発表されたとき、正直最初に出てきた感想は「うーん、これなん?」でした。
説明を読めば理解はできる。でも、理屈じゃなく一目で刺さるかと言われると、どうしても引っかかるものがあった。
その直後に本家からF40オマージュのSC40まで出てきたわけですが、現代において“40”という称号を使う以上、求められるハードルは当然上がる。
その期待に対して「これが答えなのか」と感じてしまったのも正直なところです。
もちろん、最近のフェラーリが全部悪いとは思っていません。
KC23やDaytona SP3のように、誰が見ても納得する完成度と説得力を持ったモデルもちゃんと存在している。
だからこそ今の流れには少し違和感が残る。
そんな中で出てきたのがこのV40です。
まず分かりやすいのが思想の打ち出し方。
「これはオマージュではない、再現でもない。80年代の精神を現代の言語で再構築する」というスタンスが明確に示されています。
つまり懐古ではなく、“本質の抽出と再構成”をやっている。
その思想は見た目にもはっきり出ている。
フロントは極端に低く、広く、開口部はほぼ機能そのもの。
ヘッドライト上のインレットも完全に実用優先で、ブレーキへのエア導入を担う。装飾ではなく、すべてに理由がある。
サイドは大きくえぐられたインテークが支配的で、ボディと一体化している。
“造形”というより“空気の通り道”として処理されていて、ここはかなり現代的。
リアはもっと分かりやすい。
中央出しエキゾーストに4灯テール、黒でまとめたセクション、そして極端に立ったウイング。
F40の記号を露骨なまでに使いながら、ディフューザーや空力処理は完全に現代基準。
この「分かりやすさ」と「今の技術」のバランスが絶妙です。
中身も単なる見た目だけじゃない。
ベースはSF90ストラダーレ。
そこにフルカーボンボディ、再設計された冷却系、軽量化、そして空力パッケージの全面刷新。
出力は約1100馬力、0-100km/hは約2.3秒、最高速は340km/hオーバーとされています。
さらに重要なのは「キットではない」という点。
これは単なる外装変更ではなく、プラットフォームごと作り替える“完全なトランスフォーメーション”として定義されている。
そして生産はわずか5台。
完全な顧客指定、個体ごとの仕上げ。
量産では絶対に成立しないやり方です。
ここまで来ると分かりやすい。
このV40が刺さる理由は、「何をやりたいかが一瞬で伝わる」からです。
しかもそれを説明ではなく、造形と構成でやっている。
一方で本家フェラーリは、ここ最近“文脈”や“意味”を丁寧に積み上げる方向に寄っている。
それ自体は間違っていないし、ブランドとしてはむしろ正しい。
ただ、その結果として「一発で心を持っていく強さ」が少し薄れているようにも見える。
V40はその真逆です。
荒いし、やりすぎな部分もあるし、フェラーリ本来の流麗さとは違う。
でもその分だけ、純粋に“速さと暴力性と記号”をぶつけてくる。
フェラーリに求めているものが「完成度」なのか「衝動」なのか。
その違いが、ここでくっきり分かれている気がします。
そして今のところ、その“衝動”の部分に関しては、皮肉にも外部のVENUUMのほうがストレートに突いてきている。
これがこのV40を見たときの、一番正直な感想です。


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