2025年夏、グッドウッドで初登場した黒の95-59。その「静寂の造形」が今回のラスベガス展示でどう進化したのか──本記事はその続編です。
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イントロダクション|黒の胎動から、光の誕生へ
2025年夏、Goodwood Festival of Speedでベールを脱いだ黒いプロトタイプは、まるで何かが生まれる前の“胎動”だった。
そして秋、舞台はWynn Las Vegas。
ランザンテは「95-59」を鮮烈なイエロー×カーボンで北米初披露し、光の中でその全貌をさらけ出した。
会場では、P1 LM、F1 LMとともに並び、“伝説の系譜”が再び地上に揃う。
今回の展示は、単なる新色披露ではなく「F1の魂を2020年代の技術で再構築する」という思想の完成宣言だった。
95-59という名が語る“記憶の継承”
その名が示す通り「95-59」は、1995年のル・マン優勝(#59号車)へのオマージュ。
だが単なる再現ではない。Lanzanteはあの勝利を“原点”としつつ、そこから「未来へ語り継ぐ形」として再構築した。
生産台数は象徴的な59台限定。
価格は£1.02〜1.3M(約2〜2.5億円)。
一台ごとに完全オーダーメイドで製造され、購入者の希望に沿って細部が設計される。
「大量生産ではなく、思想を共有する少数者との対話」──それが95-59の根底にある哲学だ。
シャシーと構造|750Sを“3座”として再構築する
ベースはMcLaren 750Sのカーボン・モノセルII。
だが実際は単なる換装ではなく、キャビン中央から再設計された全く新しい構造体。
中央の運転席を軸に、左右後方へ副席を配した3シーターを成立させるため、カーボンシェルそのものを再成形している。
この時点で既に“派生車”ではなく“再構築車”だ。
4.0LツインターボV8(M840系)を搭載し、850bhp超/880Nm級のパワーを発揮。
ハイブリッドは敢えて搭載せず、ピュアICEとして仕上げられた。
乾燥重量はわずか1,250kg。軽量オプション「LMパック」ではさらに-20kgを実現する。
デザイン哲学|Paul Howseが描いた“有機的な構造美”
デザインを率いたのは、元マクラーレンのデザイナーポール・ハウス(Paul Howse)。
彼は95-59を“リメイク”ではなく「現代におけるF1の再解釈」として設計した。
「空気の流れと構造を同じレイヤーで扱う」──それが彼の言う“2レイヤー構造”だ。
ボディの上層(光)と下層(影)が異なる素材・質感で構成され、機能と造形が一体化している。
その有機的な曲線は、自然の流体を彫刻したかのような生命感を宿す。
イエロー仕様で浮かび上がったディテール
グッドウッドの黒では見えなかったラインが、ラスベガスのイエローで一気に可視化された。
中央を貫くブラックストリップが、エアフローを分ける「呼吸線」として機能。
ヘッドライトはボディ面に溶け込む薄型デザインで、フロントからフェンダーへと連なる導流がまるで呼吸のように続く。
サイドは光と影の境界線が流れるように走り、リアでは象徴的な「59」グラフィックが空力の分岐点を形づくる。
その数字が光に浮かぶとき、まるで「記憶」が物理的に存在しているかのようだ。
色彩が語る精神性|黒=胎動、黄=誕生
黒のプロトタイプは「構造を秘めた胎動」。
イエローの最終仕様は「構造を曝け出した誕生」。
Lanzanteは色を装飾ではなく“メッセージ”として使っている。
イエローは光の象徴であり、内部のフレームやカーボンの影を視覚化する媒体。
つまり95-59は、光によって初めて語られるクルマなのだ。
表面で輝き、内部で共鳴する──その在り方がF1のDNAを現代に繋いでいる。
ランザンテの現在地|「改造屋」から「思想メーカー」へ
かつてF1 GTRでル・マンを制した“チューナー”が、いまや独自の思想を持つメーカーへ進化している。
P1 LMで培ったロードコンバージョン技術を経て、95-59ではデザイン・設計・製造のすべてを自社哲学で統合。
マクラーレンのシャシーを用いながらも、造形と意味の領域では完全に独立した存在へ。
「改造」ではなく「創造」。それがLanzanteが歩む新たな章だ。
スペックまとめ(展示時点)
- ベース構造:McLaren 750S系モノセルII(再設計版)
- 座席構成:3シーター中央ドライビング
- エンジン:4.0L V8ツインターボ(ハイブリッド非搭載)
- 出力:850bhp+/トルク約880Nm
- 車重:1,250kg(LMパックで更に軽量化)
- 燃料タンク:75L(ツーリング対応)
- 生産台数:59台限定/完全受注生産
- 価格帯:£1.02〜1.3M(約2〜2.5億円)
結語|F1の哲学を、未来へ走らせる59台
95-59は、単なるスーパーカーの延長ではない。
それは“ドライバーを中心に置く”という人間原点回帰の哲学であり、
AIや自動運転が進む現代における“アナログの逆襲”でもある。
センターシートは人の存在を構造に刻み、V8は機械の息吹を響かせる。
そして“59”という数字は、過去の勝利ではなく未来への誓いを意味している。
グッドウッドの黒と、ラスベガスの黄。
そのコントラストは、Lanzante 95-59という作品が持つ「影と光の物語」そのものだ。
より深い背景と初期デザイン分析は、前回の記事「Goodwoodで見た“黒の胎動”」をぜひ参照してほしい。
写真引用:
・出典:@lanzantelimited / @lasvegasconcours 各公式Instagram投稿より。
・クレジット例:“Photos courtesy of Lanzante / Las Vegas Concours, used for commentary.”
(本記事はニュース・評論目的の適正引用に基づいて作成しています)




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